見しやそれともわかぬ間に
こんなところにいるはずもない友人に酷似した方を見かけた。
というより、咄嗟に彼女だと思った。
直射日光をさえぎるために、かしげた日傘を少し高めに保持する手の甲の角度。
目的地に向かってまっすぐ、身体の芯ごと動くリズミカルな歩き方。
鋼鉄のように伸びた隙の無い背筋。
そして、いかにも彼女が選びそうな色合いとテイストの服装だった。
***
一瞬後に、吐き気がした。胃がきりきり痛む。
遅れて身体全体が揺れるような大きな眩暈が始まった。
頭の中では至極冷静に、いま記憶したばかりの画像を巻き戻して分析する。今、見た方のほうが、ひざ上が細長かった。遠目だから定かではないが、身長もたぶん2センチくらい異なる。きっと違う方だ。自分を納得させて、呼吸が楽になる。
ここにいるはずもないのにとびっくりしたのか、違う人だから安心したのか。
本当は、会いたいのか、会いたくないのか。私の本音はどこにあるのだろう。
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