すべすべほっぺ
少し前の休日の朝、ぬくぬくのお布団にくるまっていると「お肌、すべすべ。触ってみて。」とRが言ったのが、聞こえた。
それじゃあと、失礼して少し身体の向きを変え、手を伸ばす。
目覚めたてでぼんやりして身体の動きがおおざっぱ。ただでさえRは子どもで、顔が小さい。私のささくれがその肌に触れてしまわぬように、間違いなくその中の頬だけを捉えるために裸眼の目を細め、ゆっくりと指先の腹を近づける。
予想外ににしっとりすべすべの肌だった。
アトピーのRは、汗をかきすぎる夏も、乾燥する冬も、なかなかすべすべほっぺにはならない。だから本当に久しぶりの触感。
本当に柔らかい頬。
気持ちいいね。と返すと、真顔で「薬が浸透しているからね」と言った。
その言い方が、イントネーションといい話す早さといい、まるで母の物言いをそのまま借りてきたようにそっくりだった。
思わず笑みが零れそうになり、慌てて真面目な顔を装おった。
関連記事